オーケストラとは「おにぎり」のようなものです ~コンマスインタヴューその3~
Q:楽器をやってみたいと思っている方へのメッセージをお願い致します。
A:どんな楽器にもそれぞれの楽器の持つ素晴らしさがあります。
楽器を奏するという体験はそうした素晴らしさに触れて楽しむことであるとともに、それを奏でる自分自身との対話であったり、また他者とのコミュニケーションでもあったりします。
一過性の楽しみとは違い、知れば知る程に豊かさの増していく世界です。
人間の様々な表現行為にはそうした共通性があると思っていますが、楽器を奏することもまた、五感を通じて物事を感じ考えられる素晴らしい体験です。
先ずはどうぞ何か楽器を手にとって音を出してみてください。
Q:オケに参加してみたいと思っている方へのメッセージをお願い致します。
A:インターネットなどで様々な情報が手に入る時代ではありますが‥どのような練習をしているのか、どのような人が集まってどのような雰囲気であるのか、どんなことを大切にしている集まりなのか、そうしたことはネットの情報だけでは本当のところは判然としません。
自分自身がその現場にいてみないと、肌あいのようなものは実感できないですよね。
定期演奏会などをお聴きになったり、練習を見学してみたり‥そのようにして自分に合った集まりがみつかるといいですね。まあ、合う合わないというのは、実際にその中で一定期間一緒にやって色々経験してみないとわからないこともありますから、第一印象だけでは何ともいえないんですけれど‥。実体験に勝る情報はないということですね(笑)。
オケの方でも常々一緒に音を出す仲間をさがしています。
どうぞ臆することなく、集まりに足を運んでみてください。
Q:アマチュア音楽家のみなさんへのメッセージをお願い致します。
A:先ず、皆さんが日常において様々なご苦労を抱えながらも皆で音楽をつくる場に足を運ぶことを大切にされていることを、私は何よりも貴いことであると思っています。オーケストラに行けば‥そこにも様々なご苦労があるのに(笑)。
Q:(笑)
A:いや、失礼。本当に集うことこそが貴いのだと思っています。そしてまた、昨年来、「集えること」の幸せを身にしみて感じおります。
私はこれまであちこちの市民オーケストラのお手伝いをさせて頂いて参りましたが、それぞれのオーケストラにはその団なりの違いや特徴があります。成立背景、運営形態、人数や楽器のバランス、選曲の志向性、練習環境、生活基盤、まだまだ枚挙にいとまがありません。
しかし、何にせよ、そこにオーケストラ活動を行えていることを、喜ばしく思います。ですから、それぞれの団がその団の歩んできた過去に感謝し、今日現在いる仲間を大切に、更なるより良い団への思いを胸に皆さんの手で育てていって欲しいと願っています。
オーケストラ活動はチームプレーで‥「おにぎり」のようなものです(笑)。一粒一粒の米粒の結びつきが「おにぎり」を形作っているのであって、「おにぎり」という形は先にあるわけではないのですね。米粒の質や数もおにぎりの重要な要素ですが、それ以上にその時その時に構成する団員一人一人が仲間のために持ち寄った善意や頑張りや結びつきの方が、より大切なんじゃないでしょうか。
そうしたことの結果こそがオーケストラの最終的な姿なのだと思います。
演奏の上手下手もさることながら、地に足のついた音、皆の手作りである音、「人」の存在の喜び‥あたたかい血の通った音が聴こえてくるオーケストラと出会えると、本当に嬉しく思います。そうしたことこそを自分たちの大切なことが何なのかを考える基軸と思えるといいですね。恐らく文化とは、力をあわせて一緒に物事をつくることを大切に、様々な人が様々な時間軸の中で、あたたかいものを持ち寄ったことの積み重ねの結果なのだと思います。誇りとかプライドとかモチベーションとかが取りざたされることに直面することもありますが、一緒につくる音楽や仲間のために頑張っている自分がいるかどうか、その仲間たちと過ごせた時間が血の通ったかけがいのない時間であるかどうか、そうしたことの中に「言葉」では割り切れない大切なものがある事に気づいて欲しいと思うばかりです。
市民オーケストラには団員の転勤など不安定な要素もありますが、一時離れてしまった団員が「機会があればまた一緒に演奏したい」と思えるような団、そして何かの機会に参加チャンスがある人をあたたかく受け入れられるような団、つまり団の外にも素晴らしい仲間がたくさん存在する、そんな間口の広いオーケストラであるといいですね~。
おいしいおにぎり、たべたいな(笑)。
- Commented by sakai-vn on 2012-08-22(Wed)
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